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Science in Thermal and Chemical Biomass Conversion

報告者:松村 幸彦
開催日時 : 2004年8月30日(月)〜9月3日(金)
場   所 : Victoria カナダ         


カナダのビクトリアでScience in Thermal and Chemical Biomass Conversionが行われました。

<第一日目>

第一日目は午前中にガス化に関する全体セッションとポスターセッションとして以下の4つが行われました。残りのポスターも貼ってあり、自由に見られます。ポスターセッションのリストは以下の通りです。

BB Biodiesel B01-B06
GG-1 Gasification Ga01-Ga08
PP-1 Pyrolysis Pa01-Pa11
SS-2 Systems S10-S17

松村が参加したのは午前中のセッションとガス化のポスターセッションですので、これらについて以下に報告します。

<全体セッション>
[ガス化]
司会:M. Antal
1.1 Babu, S. and Hofbauer, H. Overview of gasification
 現在までの状況についての概説。近年の技術開発として高圧プロセス、各種プラント、ガス洗浄、水素膜分離、反応器材質、無人運転など。

2.1 Baumlin, S. et al. Thermal cracking kinetics of biomass derived vapours: comparison of two experimental approaches
サイクロンをガス化の反応器として用い、流通式反応器と完全混合反応器の直列として解析。また、ジェットによる小型混合反応器を用いてバイオマスの熱分解反応速度を決定、既往の研究と一致した結果を得る。

2.2 Pfeifer, C. et al. Hydrogen-rich gas production with a Ni-catalyst in a dual fluidized bed biomass gasifier
ガス化反応器と燃焼反応器を組み合わせた100 kWthの二塔流動層反応器でニッケル触媒の効果を確認。タールはナフタレンを多く含む。

2.3 Rakass, S. et al. Study of unsupported nickel catalysts for internal reforming solid oxide fuel cells
担体を用いないニッケル触媒を燃料電池の改質のために用いる検討。粒径の違う触媒を用い、数?mで担体を用いたものよりも高い活性を得る。

2.4 Ronnback, M. Gas composition in a fixed bed of biofuels
ペレットの充填層に上から着火し、燃焼面が下方へ移動する様子を観察、その上下でガスをサンプリングして組成を分析。

2.5 Kurkela, E. et al. Fluidised bed gasification of high alkali biomass fuels
灰組成の違う各種のバイオマスを流動層でガス化し、その特性を確認。K, Cl はサイクロンとフィルターの灰に。タールは6〜15 g/Nm3。


<ポスターセッション>
Ga-01 Baumlin, S. et al. Thermal cracking kinetics of biomass derived vapours:
 
comparison of two experimental approaches
サイクロンをガス化の反応器として用い、流通式反応器と完全混合反応器の直列として解析。また、ジェットによる小型混合反応器を用いてバイオマスの熱分解反応速度を決定、既往の研究と一致した結果を得る。

Ga-02 Mermoud, F. et al. Factors influencing wood char gasification at macro-particle size
各種条件で木炭をガス化。高温、高い水蒸気濃度、小粒径、高い昇温速度ほどガス化速度は向上。

Ga-03 Hornung, U. et al. Fundamental studies on gasification of biomass and coke
二酸化炭素で噴流床を用いたガス化。未反応核モデルで整理。

Ga-04 Moilanen, A. et al. Gasification reactivity of large biomass particles
バイオマスを炭化して、その後粉砕し、ガス化特性を確認。粒径が大きい粒子からの炭は反応性が低い結果。

Ga-05 Aguiar, L. et al. Influence of temperature and air/biomass ratio in the air gasification of orange husk shell
ポスターは貼ってあるが発表者が来ておらず説明なし。

Ga-06 Abu El-Rub Z. et al. Modelling of tar reduction in biomass fuelled gasification using biomass char as a catalyst
木炭を触媒として用い、タールのモデル化合物であるナフタレンを高温でガス化。700℃では触媒上にコークが析出。

Ga-07 van Paasen, S. and Kiel, J. H. A. Tar formation in fluidized-bed gasifier. Impact of fuel properties
気泡流動層でガス化を行い、生成タールを成分分析。タールの生成量や露点の変化を確認。

Ga-08 Kalisz, S. et al. Continuous high temperature air/steam gasification (HTAG) of biomass
一種の溶融ガス化。灰の融点よりも高い温度(1400〜1600℃)で充填層ガス化を行う。火格子の材料がないと。


<第二日目>

熱および化学的バイオマス変換の科学ワークショップ2日目(8月31日)の報告です。今日は、全体セッションが午前(燃焼)と午後(熱分解)に1つずつ、昼間の3時間にポスターセッションでした。また、興味のあるメンバーだけが参加するWSも分析と液体燃料について開催されました。
ポスターセッションリストは以下の通りです。

CC-1 Combustion C01-C16
GG-2 Gasification Ga09-Ga26
PP-2 Pyrolysis Pa12-Pa30
HH Hydrothermal H01-H13

松村が参加したのは全体セッションとガス化のポスターセッションHH、そして液体燃料のワークショップですので、これらについて以下に報告します。


<全体セッション>
[燃焼]
司会:S. van Loo
3.1 Baxter, L. Biomass-coal co-combustion: Opportunity for affordable renewable energy
 現在までの状況についての概説。

3.2 Oser, M. and Nussbaumer, T. Low partical furnace for wood pellets based on advanced staged combustion
 焼却における1 ?m以下の粒子の生成挙動と抑制について過剰空気を調整することによって幅広い負荷で 6〜11 mg/m3を達成。

3.3 Scharler, R. et al. CFD modeling of NOx formation in biomass grate furnaces with detailed chemistry
 計算流体動力学(Computational Fluid Dynamics)によって50種、253の反応を用いたNOx生成の計算。実機と一致する傾向を再現。

3.4 Skeiberg, O. et al. Detailed chemical kinetics modeling of NOx reduction by staged air combustion at moderate temperatures
CHEMKINを用いて流通式と完全混合の反応器でのNOxの生成を計算。2段燃焼によってNOxが減少することを示す。

3.5 Johansson, L. et al., Particles emissions from combustion of single wood pellets
ペレットの燃焼における微粒子の生成について実験的に検討。各種元素の挙動を確認。


燃焼において煙やばいじんのもととなる微粒子やNOxの生成機構とその抑制が問題になっている。無機系微粒子については一度ガス化したものが凝縮する機構が主に議論される。燃焼方法を多段にしたり、過剰空気量を調整することによって燃焼の最適化を図っている。

[熱分解]
司会:A. V. Bridgwater
4.1 Di Blasi, C. Fundamentals of biomass pyrolysis
急速熱分解における反応モデルについて概説。

4.2 Bramer, E. A. et al., A novel thermogravimetric vortex reactor for the determination of the primary pyrolysis rate of biomass
電子天秤の上に回転熱分解反応器を載せて加熱し、ここに木粉をインパルス的に導入した時の重量変化の応答を見てガス化特性を確認。

4.3 Piskorz, J. and Scott, D. S. Fast pyrolysis yields from sugar cane bagasse
サトウキビのバガスを熱分解油にして発生の季節変動に対応し、輸送性を高める検討。
熱分解油の特性を表す指標としてS/P(水溶性有機物/熱分解リグニン)値を用い、良い性質の油が生成することを示す。

4.4 Scholl, S. et al. Bio-oil from a new ablative pyrolyser
各種の熱分解反応器を紹介、特に加熱面との接触によって熱分解を進行させる反応器について検討。

4.5 Johnson, W. et al. West Lorne bio-oil co-generation project: largest commercial scale Biotherm (TM) pyrolysis plant
熱分解油を生産し、燃焼時に生成する二酸化炭素を温室に供給するプロセスの検討。2.5 MWのものを今年10月から運転開始予定。


炭をつくる炭化も熱分解なのだが、こちらで熱分解というと熱分解油の生成を一般的には指す。オーガナイザのBridgwaterもこの分野であり、研究者は多い。各種の反応器や反応機構などの検討が進んでいるが、普及にはまだ時間がかかりそうである。


<ワークショップ>
[液体燃料]
液体燃料といっても、基本的には熱分解油についての議論。現状の確認と将来の展望について関連メンバーが議論を行う。情報の共有と、方向性についての認識を一致させていく上では重要だが、このワークショップについては正直なところあまり新しいこともなかった。化学組成と油の特性の関係と、油の改質技術についての技術開発が求められる。利用案として、ガスタービンでの混焼、石油精製プラントでの改質、経済性向上のための化学原料の分離利用、ガス化利用などが提案される。経済性が問題ということでは一致。


<ポスターセッション>
H-01 Boukis, N. et al. Biomass gasification in supercritical water. First results of the pilot plant
カールスルーエのパイロットプラント]VERENAの運転報告。メタノールを用いた場合のエネルギー収支、木酢液の処理結果など。熱交換器で80%以上の熱回収を報告。デンマークのSCF Tech社が実用化に興味。

H-02 Matsumura, Y. et al. Effect of heating rate on tarry material production in supercritical water gasification
超臨界水ガス化において原料の昇温速度が遅いとタールが生成してガス化率が下がることを実験的に確認。1次反応速度式を用いて総括の速度定数を決め、低温でタール生成、高温でガス化が進む式で結果が説明できることを示す。

H-03 Vogel, F. and Waldner, M. Catalytic hydrothermal gasification of woody biomass at high feed concentrations
スイスでの基礎検討結果。ラネーニッケルを用いて木粉を超臨界水ガス化。完全ガス化はするが、触媒量も多く、木粉も300 ?mまで粉砕したもので、今後の研究の進展が望まれる。触媒劣化も懸念される。

H-04 Saka, S. Chemical conversion of biomass rexources to useful chemicals and fuels by supercritical fluid technology.
超臨界流体技術を用いたバイオマス利用技術を組み合わせた全体システムの提案。リグノセルロースの水熱処理を介したアルコールおよびメタンの合成、超臨界アルコール液化、超臨界メタノールによるバイオディーゼル生成を組み合わせる。

H-05 Minami, E. and Saka, S. Chemical conversion of woody biomass in supercritical methanol to liquid fuel
超臨界メタノールによる木質バイオマスの液化。小型バッチ反応器での実験。反応温度を350℃として完全液化を実現。生成燃料はディーゼル燃料として考えるが燃焼特性の改善が必要。

H-06 Yamazaki, J. et al. Decomposition behaviour of woody biomass as treated in various supercritical alcohols
各種アルコールの超臨界あるいは亜臨界条件を用いての木質バイオマスの液化。350℃のオクタノールを用いた時に最も良い液化特性を得る。これらのアルコールはバイオマスから得られると。

H-07 Ehara, K. and Saka, S. Decomposition behaviour of lignocellulose by supercritical water treatment and its process for their efficient use
リグノセルロースの超臨界水処理のシステムについての検討と提案。セルロースからはエタノールを得、リグニンから生分解性のプラスチックやオクタン価改良材の化学原料を得る。

H-08 Yoshida, K. et al. Decomposition of chitin and chitosan by subcritical and supercritical water treatment
キチン、キトサンを超臨界水中で分解。セルロースよりも反応性が低いが、380℃、100MPaでは数十秒で8割分解。残渣は非晶質化。

H-09 Knezevic, D. et al., Hydrothermal liquefaction and pyrolysis: a visualization study
内径2 mmの石英キャピラリ中に原料と水を封入して加圧することによって内部を観察する手法の提案。グルコースからのタールの生成などを観察。

H-10 Goudriaan, F. and Naber, J. E. HTU(TM) process design and development: Innovation involves many disciplines
バイオマスを水熱液化するHTUプロセスの紹介。100 kg/hのプラントを運転。触媒を用いず、バイオ原油を得、さらに成分分離によって収率10〜20%で軽油相当成分を得ると。

H-11 Inoue, S. et al. Carbonization of cellulose by hot compressed water treatment
バイオマスからの炭化スラリー合成の基礎研究。比較的低い温度の水熱条件で炭化を行い、通常の炭化と同程度のチャーを得る。エネルギー効率について定量的な検討はまだ行われていない。

H-12 Tsukahara, K. et al. Evaluation of thermochemical liquidization and anaerobic digestion for food waste management system based on energy recovery, GHG emission and landfill volume
バイオマスを175℃で液状化し、メタン発酵を行ってエネルギー回収を行うシステムを焼却他のシステムと比較。

H-13 Srokol, Z. et al., Hydrothermal upgrading of biomass to biofuel: Studies on some monosaccharide model compounds
各種の単糖を水熱分解した時の生成物を経時的に追い、反応の機構について提案。糖の分解生成物とその重合によるバイオ原油の平衡反応と不可逆的なガスおよびフェノールの生成モデルを提案。


<第三日目>

熱および化学的バイオマス変換の科学ワークショップ3日目(9月1日)の報告です。今日は、全体セッションが午前(熱分解生成物)と午後(バイオディーゼル、水熱、超臨界)に1つずつ、昼間の3時間にポスターセッションでした。また、興味のあるメンバーだけが参加するWSもバイオディーゼル、触媒と水素について開催されました。ポスターセッションリストは以下の通りです。

CC-2 Combustion C17-C27
GG-3 Gasification Gb01-Gb10
PP-3 Pyrolysis Pb01-Pb09
SS Systems S01-S09

松村が参加したのは全体セッションとガス化のポスターセッションGG-3、そして途中から水素のワークショップですので、これらについて以下に報告します。


<全体セッション>
[熱分解生成物]
司会:C. Roy
5.5 Girard, P. et al. An assessment of bio-oil toxicity for safe handling and transportation
バイオオイルの毒性が今後の利用、輸送に当たって問題となることが予想されるため14種類のバイオオイルの毒性について分析。反応条件と毒性との間に明確な相関は認められず。(フライトの関係で5.1と講演順序入れ替え)

5.2 Elliott, D. C. et al. Hydrogenation of bio-oil for chemicals and fuels production
熱分解生成物の特性改善と付加価値成分の生産のために水素化反応を行う。組成分析を行い、代表的な成分の挙動を確認し、反応機構を推定。最終的にシクロヘキサノールが有用物質として得られると。

5.3 Henrich, E. et al., Gasification of liquefied biomass
処理規模を高めて経済性を向上させる手法としてローカルで熱分解を行い、生成油を輸送して大規模でガス化することを提案、この中で必要となる熱分解油の生成ならびにガス化特性をパイロットプラントで確認。

5.4 Antal, M. The black gold from green waste project at the University of Hawaii
ハワイ大学で行ってきた炭化プロセスの研究の紹介。基礎研究、高収率木炭、急速炭化と研究を進め、パイロットプラントを作成、運転中。

5.1 Rep, M. et al. Hydro-thermal treatment of fast pyrolysis oils
物性向上のために熱分解油を水熱処理することによって脱酸素を行う。反応場としての水は熱分解油に含まれるものそのもの。LHVを13.9 MJ/wet-kg から23.6 MJ/wet-kg に改善。


熱分解油の改質はひとつの方向性としていつも検討されているが、やはりガソリンのような成分や付加価値成分を得られる状況にはない。毒性分析についても最終的な比較評価結果が出るにはまだ間があり、輸送のための油生成とガス化でも全体効率が40%と低い。まだ技術開発が求められる段階か。


[バイオディーゼル、水熱、超臨界]
司会:Dalai, A.
6.1 Boocock, D. G. B. and Hndal, N. Biodiesel: Meeting the standards
バイオディーゼルの規格についての概説。欧州でヨウ素価が120以下とされているのは大豆油を除くため、とか。

6.2 Kusdina, D. et al., Non-catalytic biodiesel furl production by supercritical methanol treatment
バイオディーゼルの生産に超臨界メタノールを用いて無触媒かつ遊離脂肪酸も有効利用できるプロセスを提案。さらに加水分解を前段に置き、全体の反応条件を穏和にできる2段法に発展させる。

6.3 Knezevic, D., et al., Hydrothermal liquefaction and pyrolysis: a visualization study
内径2 mmの石英キャピラリ中に原料と水を封入して加圧することによって内部を観察する手法の提案。グルコースからのタールの生成などを観察。

6.4 Vogel, F. and Waldner, M. Catalyltic hydrothermal gasification of woody biomass at high feed concentrations
スイスでの基礎検討結果。ラネーニッケルを用いて木粉を超臨界水ガス化。完全ガス化はするが、触媒量も多く、木粉も300 ?mまで粉砕したもので、今後の研究の進展が望まれる。触媒劣化も懸念される。

6.5 Minami, E. and Saka, S. Chemical conversion of woody biomass in supercritical methanol to liquid fuel.
超臨界メタノールによる木質バイオマスの液化。小型バッチ反応器での実験。反応温度を350℃として完全液化を実現。生成燃料はディーゼル燃料として考えるが燃焼特性の改善が必要。


一時に比べて、超臨界や水熱の研究が広がってきた様子がうかがえる。水を用いたプロセスについては含水率の高いバイオマスの利用技術としての認識も高まってきている。


<ワークショップ>
[水素]
個別のディスカッションを行っていたために遅れて参加したが、こちらも現状の追認に近い。技術開発はまだ必要、経済性やLCAについては前提条件に大きく依存、水素にしなくても電力や熱としての利用の方が効率が高く、水素社会が存在しないと水素を得る理由は強くない、などの一般的な議論。関連情報としては、米国エネルギー省の水素プロジェクトではバイオマスからの水素生産は補助しないことになったが別の部局からの補助は続く、欧州では二酸化炭素の市場価格として9ユーロ/t-CO2程度である、など。


<ポスターセッション>
Gb-01 Coba, B. et al. Standardisation of the "Guideline" method for measurement of tars ad particles in biomass producer gases
現在CEN TF143 として成立しているタール量測定のガイドラインを規格にする動きの紹介。基本的には液相吸収法で、現在複数の機関での相互チェックを行っているところ。

Gb-02 Garcia, L. et al., Influence of catalyst composition in steam reforming of toluene as a model compound of biomass gasification tar
ポスターは貼ってあるが発表者が来ておらず説明なし。

Gb-03 ポスターなし。

Gb-04 Ritzert, J. et al. Filtration efficiency of a moving bed granular filter
ガス化生成ガスの煤塵高温除去のために4 mm程度の粒子の移動層をフィルターとして利用。石炭灰で97%、木の炭で66%の除去率。

Gb-05 Nieminen, M. and Kurkela, E. Filtration of biomass and waste derived gasification product gas
セラミックファイバーフィルターを用いて混焼の排ガスからばいじん、アルカリ、重金属、塩素を除く。硫黄はガスなので除去できず、塩素は水酸化カルシウムを添加。

Gb-06 Rauch, R. et al. Comparison of different olivines for biomass steam gasification
オリバイン(olivine, 日本語不明、マグネシウムと鉄と珪素の複合酸化物である鉱物)の触媒特性を2塔流動層ガス化装置で確認。遊離酸化鉄の存在が有効と推定。

Gb-07 Fujimoto, S. et al. Study of reactive behaviour fo calcium compounds in steam gasification of biomass using CO2 sorbent.
ガス化反応場に水酸化カルシウムを供給することによって二酸化炭素のその場除去を行うプロセスの検討に必要となるカルシウム系反応物の反応特性を測定。

Gb-08 Juutilainen, S. et al. Doped zirconias in catalytic cleaning of gasification gas
各種金属を担持したジルコニアのタール分解特性を測定。13 g/Nm3のモデルタールを分解し、その中の難分解性成分であるナフタレンの挙動を確認。高温ほどタール分解は進むが、ナフタレンについては挙動が様々。

Gb-09 Blanchard, J. et al. Dry catalytic reforming: A review of the current scientific and technical status of the process and testing of a new 2D catalyst formulation
炭素析出があってもすぐに除去できる、というコンセプトで2次元表面上に触媒を析出させたもので、エタノールやメタンの改質による水素生成特性を検討。

Gb-10 Truong, L. V.-A. and Abatzoglou, N. Scale-up of a reactive adsorption process for the purification of biogas produced by psychrophilic anaerobic fermentation of swine manure biomass
酸化鉄による豚糞尿のメタン発酵によるバイオガスからの硫化水素除去特性を測定。熱化学的ガス化によるガスへの適用を視野に。ガスが水で飽和していることが必要。


<第四日目>

熱および化学的バイオマス変換の科学ワークショップ4日目(9月2日)の報告です。今日は、全体セッションが午前(熱分解生成物)と午後(原料調整、システム)に1つずつ、昼間の3時間にポスターセッションでした。ポスターセッションリストは以下の通りです。

FF Feedstocks F01-F09
GG-4 Gasification Gb11-Gb21
PP-4 Pyrolysis Pb11-Pb21

松村が参加したのは全体セッションとガス化のポスターセッションGG-4、そして途中から水素のワークショップですので、これらについて以下に報告します。


<全体セッション>
[ガス化生成物]
司会:R. Brown
7.1 Padban, N. et al. Reforming of product gas applied for pressurized oxygen gasification of biomass for production of transportation fuels - preliminary results
ニッケル触媒を用いてガス化の生成ガスを水素に改質。800℃以下ではコークの生成によって転化率が低いが、高温では100%の反応率を達成。水蒸気分率0.45以上が望ましい。

7.2 Nieminen, M. and Kurkela, E. Filtration of biomass and waste derived gasification product gas
セラミックファイバーフィルターを用いて混焼の排ガスからばいじん、アルカリ、重金属、塩素を除く。硫黄はガスなので除去できず、塩素は水酸化カルシウムを添加。

7.3 Pfeifer, C. et al. Comparison of different olivines for biomass steam gasification
オリバイン(olivine, 日本語不明、マグネシウムと鉄と珪素の複合酸化物である鉱物)の触媒特性を2塔流動層ガス化装置で確認。遊離酸化鉄の存在が有効と推定。

7.4 Diebold, J. et al. The BioMax(R) 15: The automation, integration and precommercial otesting of an advanced down-draft gasifier and engine/gen set
15 kWeの自動ガス化発電装置パッケージ。5 kWe, 50 kWe もあり、米国11カ所で実証中。商品化はまだだが、今後の進展が期待される。

7.5 Connor, A. et al. Operation of a Capstone micro-turbine model 330 on producer gas from a downdraft gasifier
ガス化ガスでキャプストンのマイクロガスエンジンを動かして発電。経済性を試算するが、通常の電力の10倍のコスト。タービン保守コストが高い。


[原料調整、システム]
司会:P. Watkinson
8.1 Sokhansanj, S. and Mani, S. Modelling of biomass supply logistics
ASPENモデルのように各種の処理を組み合わせ、天候、コスト、処理、バイオマスの特性などをインプットしてバイオマスを供給するシステムを構築、評価するモデルの提案(IBSALモデル)。

8.2 Beckman, D. et al. Economic assessment of international bioenergy trading
国際的なバイオマス貿易の評価。消費されるエネルギーの13〜23%が海上輸送に使われる。

8.3 Jungmeier, G. and Canella, L. Greenhouse gas emissions of energy systems with bio-oil - A comparison to conventional bioenergy and fossil energy systems
バイオオイルを用いたエネルギーシステムにおける温室効果ガスの排出量評価。

8.4 Bundalli, N. and Hogan, E. Uptake on Kamengo activities
カメンゴ社のプロセスの紹介。

8.5 McGuffie, B. and Smith, P. Desalination of salt laden hog fuel using CCE-multicontactor technology
ダイオキシンの発生を抑制するために、海上輸送された丸太の塩分と砂とを向流抽出(counter-current extraction, CCE)で処理。


<ポスターセッション>
Gb-11 Sheemann, M. et al. Methanation of biosyngas in a pressurized bench scale reactor using a slip stream of the FICFB gasifier in Gussing
ガス化ガスをメタンに変換するプロセスの検討。数g/Nm3のタールを含むガスを処理、ニッケル触媒で平衡組成まで反応を進行。

Gb-12 Zhang, R. et al. Development of catalysts for methane and tar compounds reforming
6種の金属酸化物触媒でメタンおよびタールを水素に改質。800℃程度で転化率40〜80%

Gb-13 Yin, X. et al. Synthesis of methanol from biomass-dekived syngas
ガス化ガスの組成を調整せずメタノールを合成する検討。Cu/ZnO/Al2O3を用い、240℃で収率最大。入口ガスの水素分率が高いと指摘。

Gb-14 Padban, N. et al. Reforming of product gas applied for pressurized oxygen gasification of biomass for production of transportation fuels - preliminary results
ニッケル触媒を用いてガス化の生成ガスを水素に改質。800℃以下ではコークの生成によって転化率が低いが、高温では100%の反応率を達成。水蒸気分率0.45以上が望ましい。

Gb-15 Diebold, J. et al. The BioMax(R) 15: The automation, integration and precommercial otesting of an advanced down-draft gasifier and engine/gen set
15 kWeの自動ガス化発電装置パッケージ。5 kWe, 50 kWe もあり、米国11カ所で実証中。商品化はまだだが、今後の進展が期待される。

Gb-16 Connor, A. et al. Operation of a Capstone micro-turbine model 330 on producer gas from a downdraft gasifier
ガス化ガスでキャプストンのマイクロガスエンジンを動かして発電。経済性を試算するが、通常の電力の10倍のコスト。タービン保守コストが高い。

Gb-17 Joseph, S. et al. Reburning of engine exhaust gas using biogas, syngas and producer gas
ガスエンジン出口のNOxを低減するために還元剤としてガス化ガスを少量追加し、1000℃程度で脱硝を行うシステムを提案。エンジン出口ガスにガスを添加、ニッケル熱交換器で熱回収し、多孔質バーナで焼却。

Gb-18 Waldheim, L. et al. Chrisgas project - manufacture of a clean hydrogen-rich gas through biomass gasification and hot gas upgrading
ベルナモのIGCCプラントを用いてメタノール、DME、水素を得る研究を開始。4000万ユーロのプロジェクト。

Gb-19 Rakass, S. et al. Study of unsupported nickel catalysts for internal reforming solid oxide fuel cells
担体を用いないニッケル触媒を燃料電池の改質のために用いる検討。粒径の違う触媒を用い、数?mで担体を用いたものよりも高い活性を得る。

Gb-20 Norheim, A. et al. Comparison of performance data of a solid oxide fuel cell utilized for biomass gasification and natural gas
ガス化ガスの組成に調整した混合ガスで固体酸化物燃料電池を運転。

Gb-21 Oudhuis, A. B. J. et al. Proof of principle of integrated biomass and waste gasification and fuel cells
柳の熱分解を行い、タールの分解の後、スクラバーで洗浄、圧縮して活性炭と酸化亜鉛で処理をした後に固体酸化物燃料電池でコージェネ。小規模のもので要素試験を行い、規模が大きい場合に42%の全体効率を予測。

Gb-22 Peacocke ら。プログラムになく、タイトルなど不明。250 kWeのガス化発電を行ったが、一番の問題は原料チップの収集と。


次回の会議は4年後の2008年の予定ですが、場所や詳細の日程については未定です。

今回のワークショップでは、各種のバイオマスの熱化学変換に関する研究発表が行われましたが、個人的には水熱関係の研究が広がって
来ていることと、ガス化発電小規模プラントのパッケージが出てきたことが興味深いところでした。

今回の会議報告は以上です。

※この報告は、日本エネルギー学会バイオマス部会用に用意したものを転載したものです。