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第2回バイオマス国際会議ならびに技術展覧会報告

報告者:松村 幸彦
開催日時 : 2004年5月10日(月)〜14日(金)
場   所 : ローマの南のEUR地区にあるPalazzo dei Congressi(大会議場)


第2回エネルギー、産業、気候保護のためのバイオマス国際会議ならびに技術展覧会がローマで開催されました。
会期は2004年5月10日(月)〜15日(金)、会場はローマの南のEUR地区にあるPalazzo dei Congressi(大会議場) です。

この会議は、セビリアで行われた第1回のバイオマス国際会議に続くものですが、同時にアムステルダムで行われた第12回ヨーロッパバイオマス会議に続く第13回ヨーロッパバイオマス会議と米国バイオマス会議を兼ねて行われています。

配布された参加者リストによれば5月4日現在の参加者は1034人、うち日本人は27人で、2.6%を占めます。バイオマス部会からの参加者は、松村の他は、花岡様(産総研)、平田様(川崎重工)、美濃輪様(産総研)、森川様(長岡技科大)、斉木様
(アルコール協会)、坂様(京大)、佐藤様(東大)、田島様(NEDO)、高橋様(バブコック日立)、柳下様(産総研)です。もっとも、この後に申し込まれた方、申し込んだけれど来られなかった方がありますので、実際と異なる部分もあります。


<第一日目>

午前中に全体セッションとオープニングセッション、そして個別セッション(3つの口頭発表セッションと1つのポスターセッションがパラレルで3回の計12セッション)が行われました。また、ワークショップ1(Recent technological and scientific advances in biomass gasification)も開かれました。
セッションリストは以下の通りです。

OA1, OA4, OA7 R&D of Bioenergy Conversion Technology Systems. Thermochemical Conversion - Gasification and Pyrolysis
OA2, OA5, OA5, VP10 Biomass in the Developing World
OA3, OA6, OA9 Combined Application of Biomass for Energy Industrial Products for climate Protection
VP1A Biomass Resources: Recovery and Production of Feedstock from Forestry Agriculture Animal Residues and Processing Industry
OA8 Demonstration and Market Implementation of Bioenergy in the Heat and Electricity Sector
VP7 International Biofuels Trade

松村が参加したのは全体セッションとオープニングセッションそしてOA1, OA4, OA7 ですので、これらについて以下に報告します。このほかのセッションあるいはワークショップに参加された方は、簡単に整理したものをメーリングリストに上げていただくか、あるいは松村にお送りいただければ幸いです。

<全体セッション>
PA1.1 Nielsen(Elsam, デンマーク) Integrated Biomass Utilisation System
 EUも補助をしているInteglated Biomass Utilization System プロジェクトの紹介。
バイオマスを加圧熱水で前処理し、その後エタノール発酵を行うシステムを発電所に併設、システム全体の高効率化を目指す。
詳細は以下のURLを参照。
www.bioethanol.info
www.IBUsystem.info

PA1.2 Miller (パライベ連邦大学, ブラジル) Plant biomass for sustainable production of fuels and of industrial organic chemicals and for climate protection
 キャンセル

PA1.3 Bridgwater (アストン大学, イギリス) A review of applications for bio-oil
 
from fast pyrolysis of biomass
 バイオマスを500℃に瞬間的に加熱することによって油状生成物を得る急速熱分解の技術の現状を紹介。経済性、量の確保、規格の設定などが課題。既存の発電設備で重油と混焼するテストは既に行われ、良い結果を得ている。

PA1.4 Kurkela (VTT, フィンランド) Development and commercialization of biomass
 
and waste gasification technologies from reliable and robust co-firing plants towards synthesis gas production and advanced power cycles
 ガス化プロセスのレビューと、アップドラフトとダウンドラフトの長所を取り入れた新しい固定床ガス化プロセスの紹介。タールを触媒で改質して10-20 mg/Nm3まで落とし、ガスエンジンで発電。

<オープニングセッション>
Fjallstromの本会議の目的の説明に続き、以下の話があった。
Cotana イタリア語で挨拶、通訳がないためさっぱり分からず。
Raldow EUのバイオマス政策の方向性。R&D, 実証, 技術以外の価値の評価をカバーして進める。
Stevens, Palz 亡くなった学会のCo-chair となる予定だったRay Costello の追悼
Kaempf DOE のバイオマスプログラムの紹介。国産エネルギーであるバイオマスの特徴を生かしてリファイナリーにも力を入れる。
Cunninghum カナダのバイオマス導入に関して、現在の活動と技術ロードマップを紹介。詳細は以下のURLを参照。
www.bio-productscanada.org/am/home_e.html
Telenius IEA-Bioenergyの活動を紹介。現在20カ国の参加で11のタスクを進行中。
詳細は次のURLを参照。www.ieabioenergy.com
van Swaaij この会議の議長。化石燃料の部分代替から始めること、また石油、石炭、ガス業界と共同で進めることを主張。
D.O. Hall賞が米国Gas Technology Institute の S. Babuに授与された。

<個別セッション>
OA1.1 Wang (トウェンテ大, オランダ) A filter-assisted fluid bed reactor fro integrated production and clean-up of bio-oil
 急速熱分解油の質の向上のために流動層反応器にフィルターを入れて微粒子を含まない生成油を得るFAFB反応器を提案。

OA1.2 Brancalasi (ナポリフェデリコ2世大, イタリア) Experimental analysis and empirical correlations for he devolatilization times of wood particles in a fluidized-bed reactor
 800 K に加熱した流動層の中に円筒形の木片を入れてその各所の温度変化を測定、ガス化特性を検討。

OA1.3 Lede (科学研究国立センター, フランス) Fast pyrolysis of biomass in a cyclone reactor: experiments and modeling
 急速熱分解を行うサイクロン反応器での反応進行をモデル化。いくつかの大きさの反応器の結果をよく予測。

OA1.4 Adinberg (ワイツマン科学研究所, イスラエル) キャンセル

OA4.1 Antal (ハワイ大, アメリカ) The black gold from green waste project at the University of Hawawii
ハワイ大学でのチャーコール製造技術の歴史と現状。基礎的な確認、高収率チャーコール、フラッシュ炭化と進めており、大学でプラントを作成中。

OA4.2 Roy (ラバル大学, カナダ) Fuel properties of bio-oils
soft wood樹皮の部分から真空熱分解で作成したバイオオイルを顕微鏡で観察すると油滴(wax)とリグニンのネットワークが観察され、60℃で熱処理するとこれらが分離する。

OA4.3 Henrich (カールスルーエ研究センター、ドイツ) A two stage process for synfuel from biomass
バイオマスの発生規模と収集の経済性から、まず地域で熱分解を行い、その熱分解油を収集してガス化する2段プロセスの提案。わらであれば経済性を考えて25 km半径から収集。

OA4.4 Erbrink (KEMA, オランダ) Experiments with bio-oil combustion in existing
 
small scale boilers of greenhouse heating systems
農業残渣を収集してバイオオイルを作り、これを燃焼して温室に利用するシステムの提案。トマトで4%、フリージアで20%必要なエネルギーを回収できると。排ガス性状を測定し、NOx, PAH, PCB, 重金属とも従来装置と同じあるいは低減できるとの結果。

OA7.1 Boukis (UITC-CPV, ドイツ) Hydrogen generation from wet biomass in supercritical water
ドイツの超臨界水ガス化の基礎研究からパイロットプラントの運転結果までの紹介。メタノールをモデル化合物として100 kg/h で連続ガス化を行うことに成功。水を使ったCO2除去で水素濃度94.7%のガスを得る。

OA7.2 Potic (トウェンテ大, オランダ) Gasification of biomass in supercriticala
 
water: experimental results from micro-pilot-scale
 石英キャピラリを使った超臨界水ガス化の基礎特性と超臨界流動層の基礎研究の報告ならびにパイロットプラントの状況。インコネルの粉末を加えて超臨界水ガス化を行い、触媒効果を確認。

OA7.3 Elliott (パシフィック・ノースウェスト研究所, アメリカ) Low-temperature catalytic gasification of wet biomass residues
 350℃、250 atmの水熱ガス化を金属触媒を用いて行うプラントの運転結果。反応器入口部の析出と触媒劣化が問題。触媒劣化はルテニウムと硫黄の結合、リン、マグネシウムの触媒上析出による。

OA7.4 Srokol (デルフト大, オランダ) Hydrogen upgrading of biomass to biofuel: Studies on some monosaccharide model compounds
 50 mMのグルコースを用いて水熱処理を行い、グリコールアルデヒド、フラン類、トリヒドロキシベンゼンが発生することを確認、その反応機構を議論。0.5 Mではタールなどの発生が進行。


熱化学的な転換技術開発では、明日、明後日も含めて7セッションがありますが、ヨーロッパが主となった会議であり、こちらで盛んな急速熱分解関連の講演が2セッション、また超臨界水/水熱ガス化に1セッション取られています。残りの4セッションは主にガス化に関するものです。


<第二日目>

午前中は全体セッション、午後は個別セッション12(口頭発表セッション9+ポスターセッション3)とワークショップが1つ、その後、コンファレンス・ディナーでした。セッションリストは以下の通りです。

OB1, OB4, OB7, VP2C R&D of Bioenergy Conversion Technology Systems. Thermochemical Conversion - Gasification and Pyrolysis
OB2, OB5, OB8, VP3 Demonstration and Market Implementation of Bioenergy in the Heat and Electricity Sector
OB4 International Biofuels Trade
VP5 Combined Application of Biomass for Energy Industrial Products for climate
 
Protection
OB6, OB9 Biomass Resources: Recovery and Production of Feedstock from Forestry
 
Agriculture Animal Residues and Processing Industry
WS2 Biofuels in the Transportation Sector

松村が参加したのは全体セッションとWS2 ですので、これらについて以下に報告します。

全体セッション
PB1.1 Maniatis (European commission) Overview on the state of art of thermochemical conversion technologies
 各種熱化学変換の現在の技術を各所のプラントを示しながら紹介。

PB1.2 Saddler (British Columbia大学, カナダ) Progress in the commercialization
 
of lignocellulosics-to-ethanol
 リグノセルロース系バイオマスからエタノールを生産する技術開発の状況を概説。ブラジルの例を引いて政策がエタノールの利用に大きく影響することを指摘。

PB1.3 van den Broek (Ecofys, オランダ) Implementation of the EC Biofuel Directive in the Netherlands: Facts and policies
 ヨーロッパ連合が2005年には全輸送エネルギーの2%、2010年には5.75%を再生可能とする指針を出したことを受け、経済的な検討を行い、補助がどれだけ必要かを議論。ブラジルから輸入しても輸送や税金を考慮するとヨーロッパで作ったエタノールと同じ値段になるという。

PB1.4 Ust'ak (穀物生産研究所, チェコ) Perennial spinach-sorrel hybrid - Schavnat as a new perspective multipurpose crop
 成長速度が速い新種の草本系作物 Schavnat の紹介。12-16 dry-t/ha yrの成長速度が得られ、夏季に収穫すれば含水率は15-20%。

PB1.5 Volk (New York大, アメリカ) Are short-rotation woody crops sustainable?
 再生可能な森林を規定するモントリオール/ヘルシンキ指針に基づいて短期周期栽培を評価。十分に再生可能であるという結果を得る。

PB2.1 Helynen (VTT, フィンランド) New CHP technologies for demonstration and marketing implementation
 大規模コージェネと小規模コージェネについて事例と開発の方向性を説明

PB2.2 Patel (Carbona, アメリカ) Demonstration of new gasification technology
 タールの改質器とスクラバーを備えたカルボナ社の流動層ガス化装置の紹介。

PB2.3 Best, Jurgens (FAO, ローマ) Bioenergy projects for climate change mitigation: Baselines, monitoring, and aligibility
 地球温暖化防止に関する各種ファンドの紹介とFAOとの共同研究の募集。詳細は、www.fao.org

PB2.4 Lewandowski (ユトレヒト大, オランダ) Biomass production in multiple land
 
use systems; Categorization of land use functions that can be combined with biomass production and approaches to assess their economic value
 一つの土地でバイオマスプランテーションを行う時に、これに併せて生物多様性の増進、炭素固定、水質浄化などの多機能性を持たせることの提案。

PB2.5 Palz (WCRE, ベルギー) The role of biomass for development and poverty alleviation
 農業でエネルギー生産を行う可能性について議論。液体燃料がひとつの可能性と。

ワークショップ2 運輸部門におけるバイオ燃料
 van der Heavel, Saddler, Maniatis の司会で、LCA的な検討と技術開発状況についての概説があり、それぞれについて討論があった。さらに、販売の担当も含めて全体的なディスカッションを行った。LCAについては、バイオマスからの燃料生産について研究者によりことなったLCAの結果が出ることが問題であることから、各種LCAの結果を比較するプロジェクトの紹介と結果の提示があったが、基本的には三菱総研が資源エネルギー庁の委託で行ったLCA的な検討と同じ。技術開発状況はスウェーデンの2 t/dの2段加水分解の紹介などの他、動物性脂肪からのバイオディーゼルの生産、メタン発酵や超臨界水ガス化を含む技術開発状況の報告があった。とはいえ、特に新しい方向性についての合意や意見の集約が進んだということでもなかった。なお、IEAのバイオマスに関する活動のバイオ燃料を担当するIEABioenergy Task 39の紹介もあった。


<第三日目>

午前中の前半は全体セッション、後半と午後は個別セッション16(口頭発表セッション12+ポスターセッション4)とワークショップが1つでした。
セッションリストは以下の通りです。

OC1, R&D of Bioenergy Conversion Technology Systems. Thermochemical Conversion - Gasification and Pyrolysis
OC2, OC5, OC8, OC11 R&D of Bioenergy Conversion Technology Systems. Biological Conversion, Biofuels Production
VP2B R&D of Bioenergy Conversion Technology Systems. Thermochemical Conversion. Combustion and co-combustion
OC3, OC6, VP9 International Co-operation for Accelerating the Large-Scale Worldwide Deployment of Bioenergy
OC9, OC12 Demonstration and Market Implementation of Bioenergy in the Transportation Sector
OC4, OC7, VP1B Biomass Resources: Pretreatment Supply and Logistics for Feedstock from Forestry Agriculture Animal Residues and Processing Industry
OC10 Biomass Resource: Recovery and Production of Feedstock from Forestry Agriculture Animal Residues and Processing Industry

松村が参加したのは全体セッション、OC1とポスターですので、これらについて以下に報告します。

<全体セッション>
Coombs (CPL Press, イギリス) Biological conversion of biomass for fuels and chemicals, current status and future prospects
メタン発酵、エタノール発酵、化学物質合成、酵素、水素生産(fragile & inefficient systemと)の概説。本人はバイオマスのマテリアル利用を進めるBiomatnetを主催しており、詳細はwww.biomatnet.orgを参照。

Fulton (IEA) Systems thinking for biofuels global market penetration
エタノールとバイオディーゼルについて生産、導入政策、経済性などについて概説。

Carstedt (バイオアルコール財団, スウェーデン) Systems thinking for biofuels global market
バイオ燃料について導入の現状と今後の課題について議論。インフラ整備、flexifuel vehicle (ガソリンでもエタノールでも走る車)の導入、意識の変換などを指摘。

この後、世界の国際協力について、米国、欧州、ロシア、カナダ、中国、アフリカなどの状況をそれぞれの状況に詳しいメンバーが報告。ただし、発展途上国では国際協力の議論をするよりも各国におけるバイオマスの導入状況、政策あるいは必要性についての報告が主となっていた。トピックとしてはエタノールについてニューヨーク株式市場で項目が設けられたことが言及されていた。この座談会は翌日のワークショップの紹介の位置づけあり、具体的な議論には入らず。

<OC1>
Phillips (エメリー・エネルギー社, アメリカ) Technical and economic evaluation of a 70 MWe biomass IGCC using Emergy Energy Company's gasification technology
 エメリー社の固定床ガス化を70 MWにスケールアップした場合の計算を行い、RDFの生産を28ドル/tでできるかどうかが損益分岐点という結果を得る。

Ising (フラウンフォーファー研究所 UMSICHT, ドイツ) Cogeneration with biomass gasification and producer gas-driven block heat & power plants
循環流動層ガス化の流動媒体の選択と触媒改質でタール対応を行う技術の紹介。15 mg/m3まで落とす。

Wallner (グラッツ工科大学, オーストリア) HS & E in biomass gasification plants
ガス化において健康、安全性などの様々な要素が検討されるべきという主張。生成ガス中のメタンが燃焼遅延効果を有することを指摘し、生成ガスの爆発限界について紹介。

Spliethoff (Delft工科大学, オランダ) Investigation of biomass operated integrated systems with gasifier, gas cleaning, gas compressor and gas turbine
ガス化におけるタールに対して取り組んでいるプロジェクトの紹介。タールのオンライン分析装置、油スクラバの設置、コンプレッサの選定などを行う。油スクラバは興味深い案で、通常のスクラバの前に油スクラバを設け、後段の水処理負荷を大きく低減するもの。タールは効率よく油に吸収され、使用後の油はガス化の原料に回す。

Stahl (カールスルーエ研究センター, ドイツ) Pressurised entrained gasification of slurries from biomass
このバイオマス会議とは別に行われた超臨界水ガス化の会議に出る必要があって聞けず。

<ポスター>
今回の学会では月曜と火曜、水曜から金曜の2回にわけてポスターを貼り替えて、824のポスター発表をこなす。もっとも、テーマによっては実際に貼られているポスターが4割程度ということもあったよう。転換技術については比較的出席率は良く、8割程度は貼られていた。
変換技術としては燃焼と高温ガス化が多く、超臨界水/水熱ガス化については日本、ドイツ、スイス、カナダから発表。興味深いものとしてはスイスからのガス化に伴って重金属が気相に発生する温度領域を確認できるTGA-ICPの発表があった。


<第四日目>

午前中は全体セッション、午後は個別セッション12(口頭発表セッション9+ポスターセッション3)とワークショップが1つでした。
セッションリストは以下の通りです。

OD1, OD4, OD7 R&D of Bioenergy Conversion Technology Systems. Thermochemical Conversion - Gasification and Pyrolysis
OD2, OD5, OD8 Biomass Resources: Pretreatment Supply and Logistics for Feedstock from Forestry Agriculture Animal Residues and Processing Industry
OD3, VP6 Economics and Benefits Deriving from Biomass Process Technology Integration and Simultaneous Production
OD6, OD9, VP8 Strategy and Policy Issues
VP4 Demonstration and Market Implementation of Bioenergy in the Transportation Sector

松村が参加したのは全体セッションとワークショップですので、これらについて以下に報告します。

<全体セッション>
McDonnell (Dublin大, アイルランド) Life cycle analysis (LCA) of biomass from short rotation coppiced (CRC) willow in Irelad
 キャンセル

Knight (イノベーション・マネージメント, イギリス) Global biomass resources for
 
heat & electricity generation and capital expenditure forecasts
 各種技術について将来の導入量を議論。大規模の技術についても小規模の技術についても、それぞれに必要と。

Sjunesson (シッドクラフト, スウェーデン) Bioenergy in the future energy system
 ガス生産を中心にして導入のあり方を検討。コスト削減が課題と。

Gamberale (ローマ「ラ・サピエンツァ」大, イタリア) Hydrogen from biomass gasification: production, use and distribution
 ENEA社の流動層ガス化で水素を生産する場合の試算。規模によるが、16 ユーロ/GJ程度。石炭からの水素は7〜8 ユーロ/GJ程度であり、税金免除で対応。

Junginger (ユトレヒト大, オランダ) Technological learning and cost reduction of biomass CHP combustion plants---the case of Sweden
 バイオマスの利用コストは技術開発が進むにつれて安くなる。これを経験則として整理する試み。装置初期コスト部分が下がると予想。定量性が難しいが興味深い。

Klein (ドイツ農民協会, ドイツ) Biofuels in Germany and in the European Union
 2005年に販売される輸送用燃料の2%、2010年の5.75%をバイオ燃料とするヨーロッパ指令に基づいてバイオ燃料の必要量を計算。生産拡大が必要と。一方で、農民保護とエネルギーセキュリティから輸入量は5%までにと。

Sipila (VTTプロセス, フィンランド) New concepts for electricity and biofuels production in forest industry platforms in Europe
 BioFuture プロジェクトの紹介。木質バイオマスによってCHPを行うことを考えるが、かなりの経済性向上が必要と。

Overend (NREL, アメリカ) Life cycle assessments - Where are we going?
 LCAの導入の歴史を振り返り、温室効果ガス排出の指標として認知されてきたが、アロケーション、気候への影響、定量的な評価が確立していない問題への対応、という問題点を含むことを指摘。

Edwards (European Commission) Well-to-wheel analysis of biomass based transport fuels
 バイオマス運輸燃料のLCAについて議論。アロケーション、N2O排出量、エネルギー作物の量の推算などに問題点があることを指摘。関連情報は http://ies.jrc.cec.eu.int/Download/eh

Sims (masei大, ニュージーランド) Bioenergy---Its global potential in future decade
24年前の第1回欧州会議と今回の会議の比較をして今後のバイオマスの可能性について議論。


ワークショップ3 バイオエネルギーについての国際協力ならびに発展途上国支援フォーラム
 Grassi, Utria の司会で発展途上国(基本的にはアフリカ)におけるバイオエネルギー導入の促進と経済発展支援について議論。まずこれまで活動を進めてきた世界銀行、FAO、EUBIA、WCREなどが議論を提起、次いでアメリカ、ベルギー、ロシア、イタリア、ブラジル、カナダ、UNEPから国際協力の枠組みについて紹介。ブレークを挟んで発展途上国側の意見を聞きながら議論を行う。発展途上国側からは、支援の枠組みが見えにくい、対等の立場で進めるべき、単純な装置の導入では不可、バイオマスの会議をアフリカで開くことが必要、という声があった。一方で先進国側からは、中小企業が適用できる技術を持っていても導入を行うにはリスクが高い、アフリカから学生を留学させてトレーニングしても50%は帰国せず、帰国しても適切な職がなくて結局国を出てしまう問題がある、といった意見があった。発展途上国側がプログラムの優先順位を決めること、適切な職を作ること、議論を継続することが重要と。単なる技術移転ではないこと、地域の状況も変化していること、適切なファンドの仕組みをつくることが必要であることも指摘された。基本的な考え方はアフリカにおける貧困の低減であり、そのためにバイオエネルギーを用いて生活水準を上げる、というもの。エタノールの生産などが提案されているが、これを輸出して外貨を稼ぐ、というものではない。


なお、松村はワークショップに出ていたので聞けませんでしたが、この日はNEDOの口頭発表、農林水産省のポスター発表があり、特にバイオマス・ニッポン総合戦略については各国の興味を集めていたようです。


<第五日目>

午前中は個別セッション9(口頭発表セッション9)とワークショップが1つ、午後は閉会セッションでした。セッションリストは以下の通りです。

OE1 R&D of Bioenergy Conversion Technology Systems. Thermochemical Conversion - Combustion and co-combustion
OE2, OE5 Biomass Resources: Pretreatment Supply and Logistics for Feedstock from Forestry Agriculture Animal Residues and Processing Industry
OE4 Economics and Benefits Deriving from Biomass Process Technology Integration and Simultaneous Production
OE3, OE6 Strategy and Policy Issues
WS4 Biomass Cofiring: Current Trends and Future Challenges

松村が参加したのはOE2, OE5と閉会セッションですので、これらについて以下に報告します。

<OE2>
OE2.1 Timperi (ティンバージャック, フィンランド) Experiences of the fuel supply for the world's biggest biomass power plant
 ティンバージャック社のバンドリングマシンの紹介。詳細は www.timberjack.com を参照。ただし、平面での利用を想定しており、日本のような傾斜地は想定外。

OE2.2 Nibbi (ETA-Renewable Energies, イタリア) GIS methodology and tool to analyse and optimize biomass resources exploitation
 地図情報処理技術であるGISを用いて、バイオマスを収集する場合の最適解を得るシステムの開発。ただし、循環セールスマン問題には対応せず。www.staflorence.it/biosit 参照。

OE2.3 Zhang (中央スウェーデン大, スウェーデン) Transportation fuels from biomass via gasification
 キャンセル

OE2.4 Ranta (ラペエンランタ工科大, フィンランド) Truck transportation options and profitability for logging residues in Finland
 バイオマスを輸送する場合に適用できる各種のトラックを紹介。200 km以上の輸送距離には船、列車の利用が考えられる。

OE2.5 Flynn (アルバータ大, カナダ) Pipeline transport and simultaneous saccharification of corn stober
 バイオマスをトラックで輸送する場合の最大量は200万 dry-t/yr であり、これを上げるためにスラリーかしてパイプランを用いることを検討。70〜100万dry-t/yr の輸送量以上であれば経済性が得られると。

OE5.1 Bonari (S. Anna School of University Studies, イタリア) A model of GIS-based land suitability analysis for energy crop
 地図情報技術であるGISを用いてある土地がある作物の生育に適切かどうかを判断するシステムの構築の検討。具体的な評価関数の説明もなく、その妥当性も示されず。

OE5.2 Esteban (CIEMAT-CEDER, スペイン) Outdoor storage of short rotation poplar. Variation of physical and chemical characteristics of biomass
 野積みにした木材チップが1年間にどのような変化を受けるかを測定、セルロース分が減少してその分灰分が増加すると。

OE5.3 Founti (アテネ国立技術大学, ギリシア) Potentials and perspectives of logistics and multi-criteria assessment methodologies for exploitation of agricultural biomass
 農業系のバイオマスの利用について。農家と協力して進め、圧縮せずに乾燥するのが使いやすい。

OE5.4 Haslinger (オーストリアバイオエネルギーセンター, オーストリア) Improvement of straw pellets fuel quality through additives
 わらペレットは木質に比べて灰分、N、Cl、Kが多く、灰の融点が低い。これが燃焼時の問題となるのでカルシウムやマグネシウム系の物質を混ぜることで性質を向上。

OE5.5 Rupar-Gadd (ベクショー大, スウェーデン) Spontaneous combustion of biofuels caused by microbial activity
 自然発火の原因をしらべるために、高温で作用する菌を調べる。明確な結果には至らず。


<閉会セッション>
会議議長のvan Swaaij から挨拶が会った後、Scheer からバイオマスの導入を進めるべきとする議論があり、Kwantが以下の通り今回の会議についてまとめた。
・バイオマスの利用可能量は高く、未利用の土地利用、持続可能な生産、質確保のためのインフラ整備を進めるべき。
・電力および熱への変換については、2010年の目標値を実現する努力を。
・ガス化については信頼性を示すための実証を続け、R&Dの評価を行うことが必要。
・液体バイオ燃料については、2010年の目標値の実現に向けて輸送政策と導入戦略を作成、実現すること。
・化学製品については、バイオリファイナリの検討が進んでいるが、最終利用者、研究者、政府関係者、企業の協力が必要。
・政策については2010年までは京都議定書対応だが、その先の政策を作っていく必要がある。
・持続可能な社会については評価を明確にすること。
・発展途上国については貿易が有効で雇用確保にも貢献するが、CDMの促進と持続可能性の評価が重要。
・ますますの導入が求められる。
・学会の要約として、情報交換などのネットワークがなされ、大きな目的にむけての着実な小さい一歩が踏み出されている。
この後、以下の受賞が発表された。
 Linneborn賞:Kyritsis
 EUBIA産業賞:Utria
 バイオマスジュニア賞:Domac
 ポスター賞:3件
最後にvan Swaaijから14回のヨーロッパ会議についてはフランスで行われる予定である
とのアナウンスがあり会議を終了した。


今回の学会についての個人的な感想をまとめると、各国での興味が高まっており実証試験および導入が進められて多くの事例紹介が行われていることが特徴的でした。学会のオーガナイザがしっかりしていたためか、全体セッションで比較的俯瞰的な説明があり、現在の状況がわかりやすくまとまっていました。バイオマスの推進力としては各国の政策によるところが大きく、いろいろな枠組みで検討が進められています。ただし、今回の学会は欧州に偏っており、アメリカでさえ参加者は全体の5%で、講演者は極端にヨーロッパに偏っており、この学会の内容はヨーロッパのバイオマスに対する議論を見ていると考えてもよいかと思います。特にアジアからの参加、アジアについての議論は皆無に等しい状況です。液体燃料については欧州がエタノールに目を向け始めたのが明らかです。大規模プラントと小規模プラントについて分けて議論を行い、小規模分散型プラントもかなり議論されるようになってきています。発展途上国での導入が大きく取り上げられるようになってきており、輸入の観点、貧困対策の観点から特にアフリカでの導入が議論されています。欧州でのこのような動きに対応して、日本としての世界戦略、特にアジアのバイオマス資源についての考え方と進め方は今後形作っていく必要があると思います。

最後に、松村の参加していないセッションに参加された方、簡単な報告をいただければ幸いです。


※この報告は、日本エネルギー学会バイオマス部会用に用意したものを転載したものです。