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日中バイオマスフォーラム

報告者:松村 幸彦
開催日時 : 2005年11月15日(火)
場   所 :北京 北京新大都飯店  

日中バイオマスフォーラムが北京で15日(火)に開催されました。場所は、北京新大都飯店です。

この会議は、日本と中国がバイオマスに関する相互理解を深める目的で日本の農林水産省と中国の環境保護総局が主催した物で、
日刊工業新聞社から発刊された「バイオマス・ニッポン−日本再生に向けて」の中国語版出版記念会を兼ねて開催されました。
総合司会は、劉志全(中国環境科学学会)、巽孝夫(KRI)の2名でした。

<午前>
最初に、以下のメンバーから挨拶がありました。
趙英民 中国国家環境保護総局
藤本潔 日本農林水産省
任官平 中国環境科学学会
柳瀬豊昭 日中産学官交流機構
李宝山 中国科学技術部
李遠 中国国家環境保護総局
小宮山宏 東京大学総長(録音メッセージのみ)

続いて、「バイオマス・ニッポン−日本再生に向けて」の出版記念プレス発表会がありました。
王新程 中国環境技術出版社社長挨拶
松村幸彦 広島大学(編著者)挨拶
李大寅 KRI(翻訳者)挨拶

その後、基調講演が行われました。
座長:劉舒生(国家環境保護局)、柳瀬豊昭(日中産学交流機構)

倪維斗(清華大学)「循環型経済向けバイオマス利用の新しいモデル」
 中国のバイオマス利用は、中国の実状を踏まえた実効性のあるものとする必要がある。
いたずらに大規模なものを作ろうとするのではなく、農村でのペレット利用など、地産地消が方向性である。

横山伸也(東京大学)「日本におけるバイオマス利活用の現状」
 日本の現在のバイオマス利用量は1次エネルギー供給6億kLの1.2%の70%、これを10年で約3倍にする方針。
バイオマス・アジアの枠組みで共同研究開発を進めたい。

王革華(清華大学)「中国バイオ液体燃料の発展と提言」
 中国で食料利用をおいても1.8億haをバイオ燃料に用いることができる。農村での三農問題をこれで解決したい。

銭能志(中国国家林業局)「中国における木質バイオマス資源」
 材木蓄積量は200億tで、年8〜10億tが得られ、エネルギーにはその中で3億tが使える。
Jatropha curcas L. などの油糧作物を生産することが考えられる。

崔宗均(中国農業大学)「微生物群を用いたセルロース分解」
 これまで単一の微生物での処理が考えられていたが、複合微生物群をあえて作ることによって高効率のセルロース分解ができる。
生成物の経時変化も確認。

李定凱(清華大学)「バイオマスペレットの低温成形技術の応用とその展開」
 熱をかけず圧縮のみで成形するペレットの製造技術の紹介。

<午後>
実例報告が以下のように行われました。
座長:王革維(清華大学)、松村幸彦(広島大学)

冀星(中国石油大学)「中国におけるバイオディーゼル産業の技術進展」
 現在中国では1.2億tの石油を輸入し、その海外依存度は40%。エネルギーセキュリティの観点からもバイオディーゼルを進める。
超臨界メタノールを用いる研究も行われている。

新井毅(農林水産省)「日本バイオマス戦略」
 バイオマス・ニッポン総合戦略の紹介。現在推進会議で進められている。

趙立欣(中国農業部)「中国における農林バイオマス資源とその開発利用の現状」
 稲わら 5.84億 t、製材残材3800万m3などが利用可能。バイオガスも55億m3の生産。これらの普及を進める。

尾暮敏範(トヨタ自動車株式会社)「トヨタのバイオ緑化事業」
 トヨタは中国でも植林事業や泥炭事業を進めている。バイオプラスチックも検討。

刑新会(清華大学)「中国におけるバイオマスエネルギーの研究開発動向」
 中国には石炭換算50億トンのバイオマスがある。この利用には、メタン発酵が多く導入されており、バイオ水素のプラントも作成予定。

坂西欣也(産業技術総合研究所)「バイオマス利活用のための技術開発」
 産総研のバイオマス研究センターで目指す方向であるBTLの説明。今後経済性評価も必要と。

李正龍(北京航空天大学)「有機排水を燃料とする微生物燃料電池の特性及び超音波による機能向上に関する研究」
 微生物を用いた燃料電池について、研究室規模で検討。汚水のCOD、pHなどを測定、影響を検討するとともに、
超音波で性能向上を確認。

芦沢正美(電力中央研究所)「電力中央研究所における研究開発の概要」
 バイオマスのポテンシャル調査の他、混消、性能評価、炭化ガス化の研究を行っている。

曹蔓(北京大学)「中国におけるバイオマス利用の戦略意義」
 中国のバイオエネルギー量は石炭換算16億トンと。

柏青(金迪生物科技有限公司)「有機廃棄物を利用した水素発電システム」
 都市ごみは1.5億t/年で発生しており、毎年10%増えている。メタン発酵を行い、その後改質して水素を得、
燃料電池発電をするシステムを検討。

続いて、パネルディスカッションが行われました。
座長:倪維斗(清華大学)、横山伸也(東京大学)
パネリストならびに進行
○社会システム整備についてコメントを。
新井毅 日本ではバイオマスタウンの構築を進めている。廃棄物の法制度を作り、利用を進めること。
李定凱 中国でも導入ビジョンの全体を見渡した策定が必要。
○技術開発についてはどうか。
坂西欣也 バイオマス・アジアの枠組みでAIST、農林水産省の研究所の活動がある。
匡延云 ハイテク、ソフト、リファイナリなどを、開発から実用化まで一貫して支援すべき。
董仁杰 CDMの発動があれば進むのではないか。今、進んでいない理由が重要。
○事業化についてコメントを。
長谷川清 発酵促進剤を用いた高速堆肥化を現場で行う事例がある。
王延松 農村では燃料が不足して落ち葉まで用いている。発電は高価で、熱利用を考えるべき。
杜偉 エタノールの生産が進んでいるが、インドでは政府補助の停止で生産が止まった。
○再度、社会システム整備についてコメントを。
中井徳太郎 文明の転換点にいることを認識すべき。Energy in my yard。
王凱軍 省庁間の協力や調整が十分にできていないのではないか。

白克智 発言なし。

ただし、各パネリストが意見陳述をした段階で時間切れとなり、ディスカッションはできませんでした。
とりあえず、横山様が経済的な持続性の必要性を指摘、日中間の協力と情報交換を進めることを提案、
倪様から適地適策の重要性が指摘されて終了しました。

最後に、中国国家慣用保護雄局の劉舒生から閉会の挨拶がありました。


とりあえず、情報交換、技術協力を進めようという基本的な態度が確認できたというところでしょうか。
ただ、中国のバイオマス資源量は日本の1次エネルギー供給にも匹敵するもので、確かに魅力的です。
とはいっても、13億人が日本と同じエネルギー消費を行えば、これとて中国で必要となる1次エネルギーの10%程度にしかならない訳で、
世界を見たときのバイオマスの位置づけについても考えさせられました。


以上です。